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Page:Kokubun taikan 01.pdf/446

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花のほそながはかの西の對に奉れ給ふを、うへは見ぬやうにておぼしあはす。內のおとゞのはなやかにあな淸げとは見えながらなまめかしう見えたるかたのまじらぬに似たるなめりとげに推し量らるゝを、色には出し給はねど、殿見やり給へるにたゞならず。「いでこのかたちのよそへは人はらだちぬべきことなり。よしとても物の色はかぎりあり、人のかたちはおくれたるも又猶そこひあるものを」とてかの末摘花の御料に柳の織物のよしあるからくさをみだれ織れるもいとなまめきたれば人知れずほゝゑまれ給ふ。梅の折枝蝶鳥飛びちがひからめいたる白き小袿に濃きがつやゝかなる重ねて明石の御方に。思ひやりけだかきをうへは目ざましと見給ふ。うつせみの尼君にあをにびの織物いと心ばせあるを見つけ給ひて御料にあるくちなしの御ぞゆるし色なる添へ給ひて同じ日着給ふべき御せうそこ聞えめぐらし給ふ。げに似げついたるども見むの御心なりけり。皆御かへりどもたゞならず、御使の祿こゝろごゝろなるに末摘花東の院におはすれば今少しさしはなれえんなるべきを麗しくものし給ふ人にて、あるべきことはたがへ給はず。山吹の袿の袖口いたくすゝけたるをうつほにてうちかけ給へり。御文にはいとかうばしきみちのくにがみの少しとしへ厚きが黃ばみたるに「いでやのたまへるはなかなかにこそ。

  きて見ればうらみられけりから衣かへしやりてむ袖をぬらして」。御手のすぢことにあふよりにたり。いといたくほゝゑみ給ひてとみにもうちおき給はねば、うへ何事ならむと見おこせ給へり。御使にかづけたるものをいとわびしく傍いたしとおぼしてみけしきあしけ