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の氣色見集めむ」とのたまへば、「あやしの人の親や。まづ人の心勵さむことをおぼすよ。けしからず」とのたまふ。「誠に君をこそ今の心ならましかばさやうにもてなして見つべかりけれ。いとむしんにしなしてしわざぞかし」とて笑ひ給ふにおもて赤みておはする、いと若くをかしげなり。硯ひきよせ給ひて手ならひに。
「戀ひわたる身はそれなれど玉かづらいかなるすぢを尋ね來つらむ」。「あはれ」と軅てひとりごち給へばげに深くおぼしける人の名殘なめりと見給ふ。中將の君にも「かゝる人を尋ね出でたるを、用意してむつびとぶらへ」とのたまひければこなたにまうで給ひて、「人數ならずともかゝるものさぶらふと、まづ召し寄すべくなむ侍りける。御わたりのほどにも參り仕うまつらざりけること」といとまめまめしう聞え給へば、かたはらいたきまで心知れる人は思ふ。心のかぎり盡したりし御すまひなりしかどあさましう田舍びたりしもたとしへなくぞ思ひくらべらるゝや。御しつらひより始め今めかしうけだかくて親はらからとむつび聞え給ふ。御さまかたちよりはじめめもあやにおぼゆるに今ぞ三條も大貳をあなづらはしく思ひける。ましてげんがいきざしけはひ思ひ出づるもゆゝしきことかぎりなし。豐後の介の心ばへをありがたきものに君もおぼし知り、右近も思ひいふ。おほざうなるはことも怠りぬべしとてこなたの家司ども定めあるべき事どもおきてさせ給ふ。豐後の介もなりぬ。年比田舍び沈みたりし心地俄に名殘なく、いかでか假にても立ち出で見るべきよすがなくおぼえし大殿の內を朝夕にいで入ならし、人をしたがへ事行ふ身となれるは、いみじきめいぼく