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にも事のさまだにいひしらせあへず我も人もことに恥しくはあらで皆おりたちぬ。右近は人しれず目とゞめて見るに中に美しげなるうしろてのいといたうやつれてうづきのひとへめくものきこめ給へる髮のすきかげいとあたらしくめでたく見ゆ。心苦しう悲しと見奉る。少し足なれたる人はとくみ堂につきにけり。この君をもて煩ひ聞えつゝそや行ふほどにぞのぼり給へる。いとさわがしく人まうでこみてのゝしる。右近が局は佛の右の方に近きまにしたり。この御師はまだ深からねばにや西のまに遠かりけるを、「なほこゝにおはしませ」と尋ねかはしていひたれば男どもをばとゞめて介にかうかうといひ合せてこなたに移し奉る。「かくあやしき身なれど只今の大殿になむ侍ひ侍ればかくかすかなる道にてもらうがはしきことは侍らじと賴み侍る。田舍びたる人をばかやうの所には善からぬなまものどものあなづらはしうするもかたじけなきことなり」とて物語いとせまほしけれどおどろおどろしきおこなひのまぎれに騷しきにもよほされて佛を拜み奉る。右近は心のうちに「この人をいかで尋ね聞えむと申し渡りつるにかつがつかくて見奉れば今は思ひのごとおとゞの君の尋ね奉らむの御志深かめるに知らせ奉りてさいはひあらせ奉り給へ」など申しける。國々より田舍人多くまうでたりけり。この國の守の北の方もまうでたりけり。いかめしくいきほひたるをうらやみてこの三條がいふやう「大ひさにはことことも申さじ。あが姬君大貳の北の方ならずばたうごくのずりやうの北の方になし奉らむ。三條らも隨分に榮えてかへり申しは仕うまつらむ」と額に手をあてゝ念じ入りてをり。右近いとゆゝしくもいふかなと聞き