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ほどかにあらまほしう物し給ふ。聞きついつゝすいたる田舍人ども心がけせうそこがるいと多かり。ゆゝしくめざましく覺ゆれば誰も誰も聞き入れず。「かたちなどはさてもありぬべけれどいみじきかたはのあれば人にも見せで尼になして我が世の限はもたらむ」といひ散したれば「故少貳のうまごはかたはなむあなる、あたらものを」といふ。聞くもゆゝしく「いかさまにして都にゐて奉りて父おとゞに知らせ奉らむ。いときなき程をいとらうたしと思ひ聞え給へりしかばさりともおろかには思ひ捨て聞え給はじ」などいひなげく。佛神に願を立てゝなむ念じける。むすめどもゝをのこどもゝ所につけたるよすがども出で來てすみつきにけり。心のうちにこそ急ぎ思へど京の事はいや遠ざかるやうに隔たりゆく。物おぼし知るまゝに世をいと憂きものにおぼしてねさうなどし給ふ。はたちばかりになり給ふまゝにおひとゝのほりていとあたらしくめでたし。この住む所は肥前の國とぞいひける。そのわたりにもいさゝかよしある人はまづこの少貳のうまごのありさまを聞き傅へてなほ絕えず音づれくるもいといみじう耳かしがましきまでなむ。大夫のげんとて肥後の國にぞう廣くてかしこにつけては覺えあり勢いかめしきつはものありけり。むくつけき心のなかに聊すきたる心のまじりてかたちある女を集めて見むと思ひける。この姬君を聞きつけて「いみじきかたはありとも我は見かくしてもたらむ」といとねんごろにいひかくるをいとむくつけく思ひて、「いかでかゝることを聞かで尼になりなむとす」と言はせたりければいよいよあやふがりておしてこの國に越え來ぬ。このをのこどもを呼びとりて語らふことは「思ふさま