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に、つゝみにころも筥のおもりかに古代なるうちおきて推し出でたり。「これをいかでかはかたはらいたく思ひ給へざらむ。されどついたちの御よそひとてわざと侍るめるをはしたなうはえかへし侍らず。ひとり引き籠め侍らむも人の御心違ひ侍るべければ御覽ぜさせてこそは」と聞ゆれば、「引き籠められなむはからかりなまし。袖まきほさむ人もなき身にいと嬉しき志にこそは」とのたまひてことに物言はれ給はず。さてもあさましの口つきや、これこそは手づからの御事のかぎりなめれ、侍從こそはとりなほすべかめれ、また筆のしりとる博士ぞなかるべきといふかひなくおぼす。心を盡して詠み出で給へらむほどをおぼすに、いともかしこぎかたとはこれをもいふべかりけりとほゝゑみて見給ふを、命婦おもて赤みて見奉る。今やう色のえゆるすまじくつやなうふるめきたる直衣のうらうへひとしうこまやかなる、いとなほなほしうつまづまぞ見えたる。あさましとおぼすに、この文をひろげながらはしに手習ひすさび給ふをそばめに見れば、
「なつかしき色ともなしに何にこのすゑつむ花を袖にふれけむ。色濃き花と見しかども」など書きけがし給ふ。はなのとがめを、猶あるやうあらむと思ひ合はする折々の月かげなどを、いとほしきものからをかしう思ひなりぬ。
「紅のひとはな衣うすくともひたすらくたす名をしたてずは。心ぐるしの世や」といといたう馴れてひとりごつを、善ぎにはあらねどかうやうのかいなでにだにあらましかばと、かへすがへす口をし。人のほどの心苦しきに名の朽ちなむはさすがなり。人々參れば「取り隱