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序  説

 薩摩藩は、藩主島津齋彬の出るに及んで、漸く徳川幕府の覊絆に抗して獨自の立場に卓立し、擧藩大義名分を重んじて朝廷尊崇の旗幟を鮮明にした。 爾後、よく人力と財力とを傾け、産業に、國防に、文化に、常に時代の先達となつた。 更らに轉じて、國體の本義に則り、討幕の大旆を掲げて王政復古の天業を扶翼し奉り、版籍奉還より明治四年の廢藩置縣に及んだのである。 而して、維新後、益藩内庶政の改革を断行して人物を中央に送り、以て率先新政府を誘導して其の支柱となつた。 實に幕末より維新にかけて一聯の本縣人最活動時代であり、また志士・人材雲の如くに輩出し、其の名聲天下に鳴響いたのである。

 置縣後、縣民一致協力して其の治績大いに擧り、西郷隆盛等歸郷して人材訓育のため私學校を起し、益盛大に赴いたのであるが、不幸にも漸く中央との疏