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て、兄命を逼悩し給うたことは有名なる神話である。 縡もとより神代の事で其の眞相は詳かでないが、火闌降命は日本書紀に隼人等の始祖と載せ、又「吾田君小橋等之本祖」と記し、古事記にも隼人阿多君の祖と見えるのであるから、此の神話は隼人族の歸服と云ふ事と密接な關係があるのであらう。 日本書紀の一書に「是を以て火酢芹命の苗裔諸の隼人等今に至るまでに天皇の宮墻の傍を離れず吠狗に代りて事へ奉る者なり」と云ひ、古事記に、兄命「稽首白、僕者自今以後、爲汝命之晝夜守護人而仕奉、故至今、其溺時之種々之態、不絶仕奉也」と見えるのである。近時の説に據れば、釣針の事を以て兄に報復するとか、魚の咽喉から釣針を得るとか云ふ話は、インドネジアンなどの南方の民族にもある話であると云ふ。 隼人族服屬と關連してこの南方的の説話が尊御兄弟の事として傳はつたものとも考へられよう。

 彦火火出見尊は高千穂宮に宮居し給ひ、綿津見命の女豊玉姫を納れさせられ、御子彦波瀲武盧茲草葺不合尊が御降誕あらせられた。この高千穂宮の御遺蹟に就いて種々説をなすものがあるが、その高千穂と云ふ宮名から、又は尊の御陵から、大隅の霧島山の近くに擬定されなければならないと云はれ、而か

鹿兒島神宮