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縣民先人の恩寶に非ざるなし。 こゝに縣史編纂の業を企て、以て先賢の遺業を温ね、将来の發展に資する所あらんとす。

 縣史編纂のことたるや縣民多年の要望にして、本縣教育會々長侯爵大久保利武氏また屢進言するところあり。 仍て本縣は大久保侯爵と胥謀り、東京帝國大學名譽教授文學博士黒板勝美氏に請ひ、囑するに縣史編纂の計畫を以てし、大久保侯爵を顧問に、黒板博士を監修に推し、縣會の熱心なる協賛を得て、編纂の事に着手せり。 爾來四星霜今やその第一巻公刊の朞に達せり。

然而、容易ならざるこの修史の業が所期の如くに進捗せるは、一に顧問扞に監修の力に頼ると雖も、歴代長官の指示經營宜しきを得たると、官公衙、社寺及び島津兩公爵家始め大方の諸家、また襲藏の文書秘籍の閲覽を許されしとにありと謂ふべし。

 今第一巻の上梓に際して、併せて茲に大方の好意に對し深甚なる感謝の意を表す。

昭和十四年三月

鹿兒島縣知事  藏  重  久