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環境にあるを以て、大に將來が期待されてゐる。先づ出水郡の西北には黒瀬戸を隔てゝ長島があり、其の東北には獅子島、及び伊唐・諸浦等の小島があつて天草島に續いて居る、此等は内海地溝の沈水によつて本土と分離したもので、薩摩郡の西海中の上下甑島を主とする甑島諸島も一個の地塊たりしものの上部のみが沈水を免がれたのであらうと說かれてゐる。港としては下甑の手打港、上甑の中甑港があり、又附近からは珊瑚が多く採集される。

西南諸島は琉球列島と共に弧状をなして、臺灣の北端に近づいてゐるが、此等は東支那海大陸棚の邉縁が、太平洋底の深淵と界する部分で、隆起して姿を海上に現はしたものと說明されてゐる。 その中、種子島は平地が多く猶ほ開拓の餘地を残し、西之表を主邑とし、其の他、浦田・濵津脇・島間等の諸港がある。次に屋久島は面積約三十五方里、殆んどが屋久杉以下の大森林で、島の東から北にかけて、宮之浦・安房・一湊等の諸港がある。次に大島は丘陵性の島で、海岸屈曲に富み、その名瀬港は良港として名高く、又南方加計呂麻島との間の大島海峡に臨む古仁屋港も有名である。其の南、徳之島・奥永良部島を經て本縣の極南與論島に達してゐる。

 北より東北に山を負ひ、三方海に臨むのみならず、黒潮が南より來つて海岸を洗ふため、氣温は高く雨量が多い。 鹿兒島の最低氣温は零下六度七分、雪は極めて稀で、大島名瀬の最低氣温は三度一分で、雪は全くない、最高氣温は鹿兒島三十六度二分、名瀬三十五度五分にして、平均氣温鹿兒島十六度七分、名瀬二十度九分である。而して鹿兒島にては一年の半數までが曇及び雨で、名瀬に至つては快晴の日は極く稀れで、多くは曇と雨のため、「一月に三十五日雨が降る」と云ふ諺さへ存する程である。

 上述の如き地勢の關係から縣下各地温泉頗る多いが、大體は霧島火山脈に沿うてゐる。 霧島山には霧島温泉、其の南には日當山温泉、櫻島火山の南麓には古里温泉、垂水に垂水温泉、鹿兒島市の南に鶴崎温泉、揖宿郡に指宿温泉、半島の南端に山川温泉がある。又霧島山の西北には栗野岳温泉・吉松温泉、其の西南に鵜泊・湯之尾等あり、出水郡には白木川内・湯川内・阿久根温泉等、薩摩郡には湯ノ元・入來・砂石・諏訪・市比野・湯田温泉等あり、また鹿兒島市の西北に河頭温泉、其の西日置郡に市來温泉、其の南に伊作温泉などがある。要するに霧島火山系並に其れを横断する東西支脈上に存在するが如く考へられる。