いているのだった。華奢な恐ろしく踵の高い靴を穿いている。つまり洋装した女の足なのだ。男の膝に腰をかけて両足をピンピン振っているのだ。
「よく来て下すったわねえ」女の声。
「うん――」男の声。
「ほんとうに
「そうか」
「あなた。あれ持って来て下すって」
「うん、持って来たよ」
「まあ、嬉しい、あなたはほんとうに実があるわねえ」
女の足が急に運動を止めたかと思うと、チュッと云う異樣な音が聞え〔ママ〕た。
惣太は思わず
「あなた、なぜそんなに妾をじろじろ見るの」
「余り美しいからさ」
「あら、お世辞が好いのね」
「君位美しいとずいぶん惚れ手があるだろうね」
「ないわよ。誰も惚れてなんかくれないわ」
「そんな事があるもんか、誰だって惚れるよ」
「じゃ、あなたでも」
「無論さ、でも片思いだから仕方がない」
「あら、片思いはないでしょう。あたしの方がよっぽど片思いだわ」
「――」
「あら、また恐い顔をするのね、あなた今晩は何だか変だわ。どうかなすったの」
「どうもしやしない」
「じゃ、機嫌をよくして下さいな」
惣太は長椅子の下でへた張りながら又チェッと云った。女の足は相変らず、ブランブランと彼の鼻を掠める。気早の惣太もう我慢がならなかった。飛び出そうとするとたんに、不思議な事が起った。ブランブランしている足の
「おや」惣太は首を縮めた。「この女は仲間かな」
「あなた、今日は陽気に一つ飲みましょうね」上では会話が始まる。
「僕はだめだよ」