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Page:Iki-no-Kozo.djvu/125

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 以上を槪括すれば、「いき」が模樣に客觀化󠄃されるに當つて形狀と色彩󠄃との二契󠄅機を具備する場合には、形狀としては、「いき」の質料因たる二元性を表現するために平󠄃行線が使用され、色彩󠄃としては、「いき」の形相因たる非現實的理想性を表現するために一般に黑味を帶びて飽󠄄和弱󠄃いものまたは冷たい色調が擇ばれる。

 次󠄄に、模樣と同じく自由藝術󠄃たる建󠄄築に於て、「いき」は如何なる藝術󠄃形式を取つてゐるか。建󠄄築上の「いき」は茶屋建󠄄築に求めて行かなければならぬが、先づ茶屋建󠄄築の內部空󠄃間および外形の合目的的形成に就て考へて見る。およそ異性的特殊性の基礎は原本的意味に於ては多元を排除する二元である。さうして、