Page:Iki-no-Kozo.djvu/112

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放射狀の縞は中心點に集まつて目的を達󠄃して了つてゐる。それ故に「いき」とは感ぜられない。もしこの種の縞が「いき」と感ぜられるときがあるとすれば、放射性が覆はれて平󠄃行線であるかのごとき錯覺を伴󠄃なう場合である。

 模樣が平󠄃行線としての縞から遠󠄄ざかるに從つて、次󠄄第に「いき」からも遠󠄄ざかる。桝、目結、雷、源氏香圖などの模樣は平󠄃行線として知覺されることが必ずしも不可能でない。殊に縱に連󠄃繫した場合がさうである。從つてまた「いき」である可能性をもつてゐる。然るに、籠󠄄目、麻󠄃葉、鱗などの模樣は三角形によつて成󠄃立するために「いき」からは遠󠄄ざかつて行く。なほ一般に複雜な模樣は「いき」でない。龜甲模樣は三對の平󠄃行線の組合せ