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Page:Hadaiusu(Kirishitan shiryō).pdf/11

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アダン、ヱワに授け玉ふ。諸木諸艸の實をば食すると云とも、マサンと云ふ菓實をば食すべからず。此戒を持つに於ては、アダン、エワの事は云ふに不及、子々孫々に至るまで、不老不死、如意滿足にして、時節を定め、又上天ハライゾへ召上げ玉ふべし。但し又破戒の人とならば、ハライゾテレアルをも追放し、死苦病苦を初として衆苦を身に受け、上天ハライゾへも召上らるべからず。終にはインヘルノとて、地獄に墮在すべしとの義なりしに、件のルシベ〈一本ベノ濁點ナシ以下同〉ルと云へる天狗、人間このまゝにてあらば我失ひたるハライゾ、上天の位階を奪はるべきことを妬み、ハライゾテレアルへ窺ひ入れ、女のヱワに勸めて云、何とて此マサンの菓子をば食せざるぞ。是は三世をしる智慧の菓子にて、是を食へばDsデウスの如く成故に、Dsの如く人をなさせらるまじき爲に戒め玉ふぞと云へば、ヱワ卽これを食ふ。夫の阿檀も同く食して天戒を破りし故、ハライゾテレアルをも追出し、今この子孫の我等に至るまでも、死苦病苦を先として艱難こゝに極り、剩へインヘルノに墮さるべき身となりたる者也。

破して云、正理には背きしと云へども、初め一段二段までは、ちとをとなしげもありつるが、三段より此段をきけば、淺より深に入にてはなく、漸々淺まになる。是より奧猶思ひやられたり。先思ひても見よ、天戒と云其名は貴に似たれども、戒法の品こそあるべきに、マサンの菓子とて、あまぼしのやうなる物を食すること勿れとは、誠に笑具の第一なり。老婆を誑し、小兒の泣をすかすには似合