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如法性本分の天地に充塞し、六合に遍滿したる理を聞はつり云ふかと覺へたり。似たる事は似たれども、是なることは未だ是ならずとは、如此のことをや云べき。さて汝云はずや、Dsはサヒヱ〈一本ヱヲアニ作ル〉ンチイシモとて、三世了達の智也とは。然らば彼女安〈一本女安ヲ安女ニ作ル〉を造らば、卽時に科に落べきと云ふことをば知らずんばあるべからず。知らずんば三世了達の智と云へるは虛談なり。又知りながら作りたらば、慳貪の第一也。万事に叶ふDsならば、安女の科に墮ざるやうには何とて作らざるぞ。科に落るを儘に任せ置たるは、頗る天魔を作りたる者也。無用の天狗を造り、邪魔をなさするは何と云ことぞ。蓋しDsデウスの造りそこなひか、但し又安女は天地万像を造りたると云ふ、其こけらくづにてインヘルノの猛火にくべたる歟。呼々大笑。

   四 段

提宇子云、Dsデウス、天地森羅万像を造り終り玉ひ、万物の靈長として人間を作り玉ふ者なり。但し人間初めより如此無量無數に造り玉ふと云にはあらず、阿檀慧和とて、夫婦二人を作り玉ひ、万の智慧分別を勝れて與へ玉ひ、ハライソテレアルとて、地上の極樂世界に置玉ふ。このハライゾ〈一本ゾノ濁點ナシ以下同〉テレアルと云へる所は、不寒不熱にして衆苦を離れたる所なり。阿檀、慧和、この所に居られし程は、貧苦病苦と云ふこともなく、如意滿足にして千苦万苦〈一本万苦ヲ万勞ニ作ル〉、あたりへも近付ざる者也。玆に於てDs又一戒を