Page:Gunshoruiju27.djvu/314

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にへののいけは。はつせにまうでしに。水鳥のひまなうゐてたちさはぎしがおかしく見えしなり。水なしの池こそあやしうなどかうつけたらんととひしかば。五月などすべてあめいたうふらんとするおりはこのいけに水といふものなむなくなる。いみじう日てるべきとしは。春のはじめに水などいとおほくいづるといひしを。無下になくかはきてのみあらばこそさはいはめ。いづるおりもあなるを。ひとすぢにもつけけるかなとぞいらへまほしかりし。さるさはの池は。うねべの身なげたるをきこしめして行幸のありけんこそいとめでたけれ。ねくたれがみをと人まろがよみけんなど思ふにいふもおろかなり。をまへのいけも。なにの心にてつけけるならむとゆかし。さやまのいけは。みくりといふうたの。げにおかしうおぼゆるにやあらん。こひぬまのいけ。はらの池は。たまもなかりそとよみけむいとおかし。ますだのいけ。すがたの池。

井は。はしり井。あふさかなるがおかしき也。山の井など。さしもあさきたとへになりはじめけむ。あすか井は。みまぐさもよしとほめられたるこそおかしけれ。ほりかねの井。たまの井。少將井。さくら井。きさいまちの井。

市は。たつのいち。つばいちは。やまとにおほかる所のなかに。はつせにまうづる人のかならずとまりけるが。觀昔の御しるしあらはるゝ所にやと思ふに心ことなるなり。おふちのいち。しかまの市。あすかのいち。

いへは。このゑの御かど。二條あたり。一條もよし。すざぐ院。かも院。をののみや。すがはらの院。こうばいどの。あがたの井イと。そめどの。れいぜい院。とう三條。こ六條。