Page:Gunshoruiju27.djvu/183

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事にこそ。詩作る人の聯句嫌ことはいまだなし。何とて歌よみの連歌をゐみ給ふやらむ。初心のおりこそ猶用心も侍るべけれ。口も心もさだまりたらん人の連歌にとられ給ふ事やはあるべき。さて又歌の判の詞といふこともすべて道の人のかゝぬ事になれり。是もいといぶかしくおぼえ侍りけりイ。後峻蛾のゐんの御時などは。當座の歌イ无にも判の詞かゝれぬはなかりき。爲家卿光俊朝臣などこそたびごとにふでをとりて詞の花をそへられしか。此ごろ承れば。道のあやまちあらじとてかやうにとゞめられ侍るにこイぞ。是はことはりなるかたもあるにや。唐國の文をうかゞはざる人は。すべて判の詞をば思ふまゝにはかきのべられがたき事イにや。されば基俊などは詩作りにて有しかば申にをよばず。俊成定家爲家卿までは。ひろく學問をせられたる人にてあれば。歌の判も唐國の詞をかざり。ゆうにとりなされてこそかゝれしか。今は我道の事をこそわづかにたしなみ給ふらめ。あらぬ道まではうかゞひ侍る事のなければ。判の詞かゝれざらんもいはれあることなり。せむなきことなれども。あまりおぼつかなく覺ゆるにつきて申出せる也。先にも申つるやうに。ものこのむくせの老の僻みに猶まさり侍る事こそ。かへす我身ながらもどかしく覺ゆれ。されどむかしよりこのみたき事のイ一あるをいまだこのみいだし侍らぬが。この世の恨とも。こんイ世の障ともおぼゆる也。馬牛萬の鳥獸はがいぶん涯分求出す事もありき。茶香の具足はやるころは。伊勢物ふぜい尋出して。茶のひくつはきあつめて。からみたてたるも。心ひとつは物ごのみの數とも思ひなし侍るべし。井の中の蛙の水をたのしみて宮殿樓閣とおもひたるもことはり也。大鵬と