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Page:Gunshoruiju18.djvu/649

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 いく千歲かきらぬ御代は席田のつるの齡もしかしとそ思ふ

 盧かきのまちかき跡を尋ても小嶋の里にみゆきやはせぬ

 世の人のあたを結ふの神なりといのらは心とけさらめやは

近江の國に番馬といふ所より路をかへて南へ行。番馬を物の名にとりなして。

 わくるののまた末遠きくさはには日影の駒よ暫しとゝまれ

すりはり峠を南へくたるとて右にかへりみれば。筑夫嶋などかすかにみえて。遠望まなこをこらす。ふもとには神田といふ所の一つなき田などみゆ。又左のかたにはそびえたる岩に松一木ある。その下に石塔あり。西行法師がつかといひつたへたるとなん。

  南行數里下陽坡   西望平湖遠不

  孤嶋屹然何所似   琉璃萬頃一靑螺

 旅衣ほころひぬれやすり針の峠にきてもぬふ人のなき

西行が歌に。ねかはくは花のもとにて春しなむそのきさらきのもち月の比とよめることをおもひ出て。

 いかにして松の蔭には宿るらん花のもとゝかいひし言のは

かねてはかのむらにとまるベしとさだめしかども。とかくして日もくれがたになりぬれば。小野といふ所まで行て。その夜はさる小庵に一宿しぬ。今春大夫來逢て。一聲を出して羇愁をなぐさめ侍り。

 枕ゆふをのゝをさゝの短かよも旅にしあれは明しかねつゝ

廿二日。小野をたちて。たがといふ所をすぐ。やしろあり。

 ふりはてゝ神さひにけりたかの宮誰世にかくは祝ひ初けん

四十九院を物の名にあらはす。

 かり人は山にしゝふくいむ事もしらぬ爲には我そ音をなく

 亂れ行世にあふみちのおのかしゝうくいむへきは此身也鳬

たがみやかはらは水のあとばかりなり。

 過行はたかみやかはら水もなしことしはをそき五月雨の比

えち河をすぐとて。

 えち川のさてさす瀨々に行水の哀もしらぬ袖もぬれけり

觀音寺といふ山寺をみやりて。この名は諸國