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給て。しづかにかちぢをこそくだらせたまはめ。いかゞ侍べきと仰らるゝ。探題は我かたにいらせたまふを申とゞめむこと世のそしりもやとおもひけめども。此たびの浪風のさはりたゞごとともおぼえ侍らず。かつは都にもいそがせ給べきことのわたらせ給にこそと思に。人のそしりを忘つゝ歸り上らせ給べきよしを申けり。武藏入道もおなじ心に申めり。是はなを御のぼりにもうたつによらせ給べきことをことぶき申さむの心もや侍けむ。此こと定て。けふは又たかすにかへらせたまひぬ。
十七日は是にとゞまらせ玉ひぬ。今河越後入道は是よりまかり申て。かちぢよりつくしに下りしかば。御はかしなど給りて。かたじけなきおほせどもうけたまはりしかば。うれしなきの淚袖もしほゝに見えしなり。此たよりにつくしの人にもみせよとにや。御みづからさまざまの事どもかゝせ給て。御文一くだり探題にたまはりけり。老の後のめいぼくなるベし。やがてつくしにつかはしけるとなむ。今日備後より山名宫內少輔まいれり。御のぼりに尾の道を御覽ぜさすべきよし申。父の左京大夫〈伊豫守〉は。やまひによりてまいらず。
十八日。かまどの關に御かへり有。これにて大內一ぞくども伊與の河野など御目にかゝりきときこゆ。今朝をひ風有とて出させ給。
十九曰。かまどの關より周防國やしろの嶋。よこみ。いつゐ。あき。ふなこしなどいふ浦々嶋々とをらせ給。此南のかたにあたりて。伊豫國まさきがふろ。いほたうのうらのせと。ふたかみまさかりのせと。はしかみのせと。ぬわ
あさなけに蜑のかるてふ藻鹽草たゝやかまとの關といふ覽