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いい、同一色とはいい難い表現をしている。)。
 付着斑痕を、血痕と感じたか、その他の汚れと感じたかの区別は、経験上比較的確実な証言を求めうると解されるが、血痕の色あいについて、これを見分した者の表現の差異をとらえて、過大に証拠評価するのは当を得ないと考える。再審判決は、「証人〔丙4〕は灰色がかった赤紫(ぼたん色がかったねずみ)といい、証人山本正太郎は灰色がかったピンク(赤みのあるねずみ色)と赤みがかった鈍い紫色(赤ぶどう酒のような色)との間の色といい、証人〔丙〕はあかるい紫(藤色)とあかるい赤紫(つつじ色)との間の色かまたはあさい紫(紅藤色)と紫がかったピンク(薄紅色)との間の色であったと証言し、三者三様の色合いを供述しているのである。本来同じ色合いの印象であるべき筈のものが、前記色名帖に照らし三者の色合いに濃淡の相違があることは解せないことである。」 旨判旨するが、そもそも、二〇年余りを経過後に右のような証言を求め、その証言の差異を過大に評価するのは正当とはいい難い(既に述べたとおり、〔丙4〕、山本正太郎、〔丙〕、松木明等は、再審廷において極めて率直に証言しているのであるが、記憶喚起のための適切な配慮を欠いたため、重要な証言がなされておりながら、これから多くの重要な事実を引きだす機会が失なわれている。)。
 以上詳述したとおり、もとより原告等主張の如き捜査機関が右証拠品を偽造した事実は存在しない。
 再審判決は、本件白ズック靴及び同海軍シャツについての鑑定に関し、数多くの重大な事実を無視乃至誤認したえで証拠評価を加えているのであって、到底承服し難く、これの正当性を前提とする本件訴は棄却されるべきものと信ずる。

別紙


別紙 準備書面㈡

 被告は、昭和五三年五月二五日の本件第三回口頭弁論期日においてなされた証人松木明、 同〔丙〕の各証言を踏まえたうえ、準備書面内を次のとおり補足し、右両名の証言が充分に信用しうることを明らかにする。
 一 被告は、準備書面㈠第二、一、4において、松木明、〔丙〕作成名義の本件海軍シャツに関する鑑定書に記載されている。ママ

「㈠付着せる斑痕イ、ロは血液である。㈡其の血液は人血である。㈢其の血液型はABO式に於てはB型、Q式に於てはQ型である。尚図参のハ点、ニ点につい て血液試験を行った処顕著な血液反応を示した。」

旨の鑑定内容は、ABO式検査については昭和二四年八月二三日ころ実施したものであり、Q式検査については同年一〇月一五日ころ実施したものであり、右二回にわたる検査結果を一通の鑑定書に記載したものであることを指摘した。そして、先日松木医師、〔丙〕技官もこれを認める証言をした。
 ところで、右事実は、前記鑑定書(乙一一一号証)と〔丙〕作成の乙一一二号証の二の報告書(写真添付)とを比較検討することによっても、容易に確認することができる。
 すなわち、右報告書中三枚目の写真にかかる説明記載に、

「四 胸の○○○ ○―○の痕の斜下方の穴は松木医師の左肩の血痕試験のため対照として切りとった処。」

とあるが、これを前記鑑定書(乙一一一号証)の図参でみると、「胸の胸の○○○ ○―○の痕」とあるのは「ヘ」及び「ニ」の部分に該り、「斜下方の穴」とあるのは「ト」の部分に該り、「左肩の血痕」とは「イ」の部分に該ることが明らかである。そうし