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して十六七なるが、容顏まことに美麗なり。流石の熊谷も打驚かれつゝ、腕をゆるめ、扶け起して、あな美しの若殿や、助け參らせん程に、御母みおやの許へ落ちさせ給へ、熊谷の刄は、和殿の血に染むべきものならず。敵に見咎められぬ間に、とくとく逃げ延びたまへとありければ、上﨟は、吾妻の武士は、唯だ荒くれたる男とのみ思ひけるに、かくもやさしき武夫もありけるか、我こそは無官の大夫敦盛なれ。一旦敵に組敷かれながら、助からんは武夫の耻ぞ、熊谷ごとき情知つたる武夫に、首打たれんは本望なり、和殿も我を討つて功名せよやと云ふ。老功の熊谷が霜置く頭に振り翳したるこそ、あまた度、人の玉の緖を絕ちける刄なれ。されど猛き心も碎け、我子の小次郞が今日の初陣に、貝鐘諸共に先驅けしたる