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仁、天下無敵』と。又た曰く、『仁天之尊爵也、人之安宅也』と。又た、『君仁莫不仁、君義莫不義』とも曰へり。而して孟子の之を說く、更に詳なるものあり。蓋し國君德を好めば、百姓之に歸し、從つて地自から大に、貨自から殖し、此れを用ひて謬らず、德は本にして、利は末なりとは、即ち孟子が王道の大義にして、『不仁而得國者有之矣、不仁而得天下之有也』と曰ひ、又た民の心を得ずして王たる能はざるを說けり。帝範に曰く、『天以寒暑德、君以仁愛心』と。抑も武力角逐を常とせる封建制度の下に在りて、人の能く壓制無道より免るゝを得たる所以のものは、即ち仁の德大なるを以てなり。臣僕は其『生命、肢體』を捧げ、而して君主は此れが生殺を恣にするや、壓制從つて生ず。外人徃々之を罵つ