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第五章 仁愛不忍の心

 武士道は愛敬、寛仁、同情、憐憫を以て、德の最なるものとし、人の靈魂の賦性の最も高尙なるものなりとす。仁は二樣の意義に於て王者の德なり。即ち高尙なる精神に伴ふ多くの資禀の冠たるのみならず、又た特に王道に契合するが故に德の王なり。慈悲の王者に於けるは、冠冕よりも貴く、又た權威に勝るとは、吾人は沙翁を俟ちて始めて之を知るものに非らず。唯だ宇內諸人と共に、彼より初めて此名言を聞くを得たるのみ。孔孟屢ば王者の一日も仁勿るべからず、『仁也者人也』なることを明かにせり。孔子曰く『國君