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Page:Bushido.pdf/63

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能ありとても、學問ありとても、節義なければ、世に立つ事を得ず。節義あれば、不骨不調法にても、士たるだけの事缺かぬなり。

(眞木和泉)

と曰へり。孟子は『仁人心也、義人路也』と曰ひ、且つ嘆ずらく、『舍其路而弗由、放其心而不求、哀哉。人有雞犬放、則知之、有心而不求』と。吾人は爰に孟子の世を去る遠く、國を異にして生れ、『我は義の道なり、我によりて失はれたるものは見出さるべし』と說きたる大敎師基督の譬喩の『鏡を以て見るごとく見ること昏然おぼろなる』面影を認め得べきに非ずや。アヽされど予は歧論に馳せたり。唯だ云はん、孟子の所謂、義とは、即ち人の失ひたる樂園を恢復すべき、直くして且つ狹き道なりと。