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第二章 武士道の淵源
武士道の淵源を繹ぬるに當り、予は先づ佛敎を擧ぐべし。佛敎は武士道に供するに、安心立命の志氣、從容として運命の免るべからざるに服するの心念、危難災厄に臨みて、ストイツク的なる沈着不動の情操、及び生を輕んじ、死を甘んずるの意氣を以てせり。柳生但馬なりし乎、彼が劍道の門弟たる三代將軍の、斯道の奧義を極めたるを見て、唯だ此上は禪を學び給へと申せし昔話もあり。禪とは梵語のドヤナにて、小泉八雲氏は之を說明して、『冥想沈思の自力を以てして、言語文字を超脫せる思索界に轉迷開悟するの法なり』