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註(一) テレサ(Theresa)はポトリアの一伯爵の女(〈妻なりとも云ふ〉)なりしが、波蘭王カシミルの小姓マゼツパ(Mazeppa)と契れり。然るに伯爵はマゼツパが一介の小姓なるを賤みて、其無禮を憤り、彼を狂馬に縛して追放したり。マゼツパ其後、コサツクの將軍となり、一國君となりて、露國とプルトワに戰ひて之に勝つ。(〈第十七世紀〉(バイロンの史詩『マゼツパ』を見よ。)

註(二) 希臘神話時代に於けるシーブス國王エヂパスの女にアンチゴネ(Antigone)あり。其父盲目の身となり、且つ其國を奪はるゝや、之に伴ひて漂泊し、父死してシーブスに歸りし時、其兄又た歿す。然るに篡奪王クレオン、其遺骸を葬ることを禁じたるに、アンチゴネは禁を犯して之を葬る。クレオン怒つて、アンチゴネを生埋の刑に處す。クレオンの子にして、アンチゴネの情人たるヘマン亦た彼女の墓側に自殺す。其事蹟は希臘詩人ソホクリーズの一大悲劇を成すものなり。