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士道の敎訓に負ふものあるを感謝せずんばあらず。

 之に反し、日本人の性格に於ける彼の缺點短所は、其の責又た大いに武士道に存すとするは、頗る其當を得たり。吾人の形而上哲學思想に乏しきは――我國の靑年の科學硏究に於て、旣に嘖々の名聲を宇內に馳せたるものありと雖、一人能く哲學の範圍に於て、何等の貢献をなせるもの無し――其原因を繹ぬるに、武士道の敎育制度の下に、形而上學の訓練を閑却したるが故にあり。吾人が過大の感情、躁急なる性僻の責は、功名心に歸すべく、外人の往々非難するが如くに、吾人若し自負尊大の念に熾なりとせば、これ又た名譽心の病的結果たるに外ならず。

 外客、日本を遊歷するに當り、頭髮蓬々、弊衣破袴、巨杖を手