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久保、木戶諸氏の傳記を繙いて之を見よ。又た伊藤、大隈、板垣等現存せる數氏の回顧談に聞け、而して彼等俊傑の士は武士道の下に其思想行爲を刺戟せられたるものなるを知らん。ヘンリー、ノルマン氏は絕東問題を硏究觀察したる後、日本國の他の東洋專制國と異なれる唯一の特點を擧げて、『人智の案出したるものゝ中、至正、至高且つ至嚴なる廉耻の感念の、國民に及ぼせる統治的感化なり』と云へるは、即ち能く新日本の今日を興し、又た之をして將來の宿命に到達せしむべき原動力に觸着したる卓見なり。

 日本の改造刷新は全世界に顯揚せる事實なり。此の大事業を爲すに當りてや、自から諸多の動機の混入せるあり。然りと雖、人若し其主力を擧げんには、何人も指を武士道に