コンテンツにスキップ

Page:Bushido.pdf/246

提供:Wikisource
このページは検証済みです

士の建設したるものなり。

 マロツク氏の指敎富贍なる良書『貴族主義と進化』は、快達の筆を以て、『社會進化は、其の生物的なるに非らざる限り、是れ偉大なる人物の意志より生ぜる無意識の結果なりとの定義を下すを得べし』と曰ひ、更に、歷史的發達は、『槪するに社會の生存競爭に由つて生ずるものに非らずして、却て大多數者を最良の方針に指導し、敎誨し、使役するに於て、小數者間の競爭より生ずるものなり』と說けり。氏の所論は、之に對し是非の批評を揷むの餘地無きにしもあらざるべし。されど其說く所は我帝國旣往の社會進步に於ける、武士の功績の大いに之を確證するものあり。

 武士道の精神の、凡百の社會階級に浸潤したることは、平