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Page:Bushido.pdf/243

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マンの無きに苦しんで、此れが爲に高き價を拂ひたり。紳士若し在りたらん乎、樂園は更に多大の風趣を備へ、始祖は辛辣なる經驗を舐むること無くして、エホバに背くは不忠破廉恥なり、反逆暴戾なることを學びたりけん。

 過去の日本は武士の賜なり。武士は國家の美花たりしのみならず、又た其根帶なりき。優渥なる天惠は武士を通じて汪溢したり。士は自から社會に標置すること高く、衆庶の上に嶄然たりしと雖、亦た此れに與ふるに道義の標準を以てし、又た模範を示して敎導せり。素より武士道の敎訓は顯密の二義を具し、顯義エキゾテリツクとは卽ち功德を遍くして、社會の安寧幸福を企圖し、密義エソテリツクとは卽ち純德アレタイツクを全うして、自から德業を成すに汲々たるものなりき。