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第十五章 武士道の感化
武士道の道德は、我國民生涯の平地に崛起せる一帶の山陵にして、而して吾人は今爰に纔に、其の嶄然卓峙せる數峰の頂を觀望したるに過ぎず。日輪東天に朝するや、先づ高巒の巓頭を紅に染めてより、稍に其光輝を谿谷の間に投ずるが如く、其初、唯だ、武人の階級を耀かしたる倫理の系統は、時を經るに從ひて、庶民輿衆の間よりして、渴仰隨喜の徒を生ずるに至りたり。平民主義は天成の王者を興し、貴族主義は王者の精神を庶人に遍くす。善德は惡習と共に傳染す。エマソン曰く、『一個の團體は、唯だ一人の賢者を要す、