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Page:Bushido.pdf/237

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存する倫道即ち忠義を擧げて之を說き、他は又た武士道の特質たるものに非らざりしを以て、予は唯だ機に觸れて、多少の言を加へたるのみ。此等は自然の愛情に基くものなるが故に、凡百の人類皆之を有し、唯だ其敎訓とする所のものゝ誘起したる境遇により、彼此の特點の或は著明なるを致すことあり。而して語爰に及んで、予は又た男子間の友誼の、互に刎頸を約し、斷金を契りて、堅實切偲なるものありしを想起せずんばあらず。靑年の日に於ける男女の間の隔障は、爲に友人が莫逆の交遊に加ふるに、小說的愛慕の交情を以てすること尠からざりき。盖し靑年男女間の此の隔障は、歐洲武士道又はアングロ、サクソンの國土に於けると異り、愛戀の念の自然の流に奔下するを抑止したりしな