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るの迷信を有し――此念は實に今日の獨逸に於て消滅しつゝありとも――又た米國人の其社會的生活を始むるや、女子の寡數なるを憂へたるよりして、(當時英國より少女の輸入せらるゝや、數斤の煙草の類に代へて結婚するを許したることありたりと云ふ)――今や其數次第に增加して、或は恐る、米國女子は、其植民時代の母の享けたる特權を喪夫しつゝあるものなるを――泰西文明國に於ては、男子の女子に加ふる敬意は、即ち主たる道德標凖を成すに至れり。然るに武士道の倫理に於ては、善惡の分水點を他に求め、之を義務の邊に置いて、人を自己の神聖なる靈魂に結び、且又予の先きに述べたる五倫の道に於て、彼を他人の靈魂に約するものなり。此の五倫の中、吾人は獨り臣下たる一人と、君主たる他人との間に