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在りて、即ち社會上政治上の單位としては、多く稱するに足らずと雖も、妻とし、母としては至重の尊尙、至深の愛護を受けたり。試みに思へ、羅馬人の如き武斷なる國民の間に於けるも、其婦人は多大の尊敬を享けたることを。これ即ち彼等がマトロナたり、母たりしが故に非ずや。戰士たり、立法家たるが故に非ず、唯だ其母なるの故を以て、羅馬人は其前に跪きたり。吾人も亦た然り。父夫の家門を去つて、戰塲に臨み、列伍に在るや、齊家保育の務は擧げて母妻の掌中に歸し、幼者の敎育は固より、彼等を衞護するの任も亦た全く婦人に存したり。彼の女子の武藝の如きも、要するに其兒子を敎育して過無きを得んことを旨としたるものなり。

 一知半解の外人、往々膚淺の觀察を下し、日本人の槪ね其