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授くるに懷劍を以てす。以て或は敵人の胸を刺すことあるべく、或は以て己れが胸を貫くことあるべし。女子の自から刄に伏したる頗る多し、されど吾人は彼等を俟つに酷評を以てせざらん。基督敎徒の良心は、自殺を憎惡す、されど尙ほペラジア及びドミニア二女子の自殺者を崇め、聖者となして其純潔貞操の德を頌するを見れば、彼等の我が自刄の女子を目すること恐くは刻薄に失するものある勿からん乎。日本のヴアジニア(註)ならん乎、其貞德の危殆に瀕する、必ずや嚴父の刄を待つこと無く、其劍は常に藏めて懷に在りたり。自害の作法を知らざるは女子の耻づる所なりき。解剖學にこそ暗けれ、女子は正に咽喉の何處を刺すべきものなるかを知らざるべからず。死の苦痛は劇甚なり