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全國、全社會は、以て災害の應報違ふこと無きを認む。夫れ正義の觀念にして充足せらるべくんば、何ぞ更に又た敵討を要とせんや。然るに新英州の一神學者の評するが如くに、敵討の若し果して、『犧牲の生血に渴し、之に飽かんことを欲するの希望を餌食とする餓虎の心念』を意味するものなりとせば、僅に數項の刑法明文の、直ちに之を根絕せしめたる事、焉んぞ能く今日の如くなるを得んや。
切腹も亦た法度上、旣に其存在を認めざるに至りたりと雖、吾人は猶ほ徃々敢て之を行ふものあるを聞く。而して過去の記憶の繼續せん限り、これを耳にすることあるべし。自殺宗信者の數は、世界中懼るべき速力を以て、增加しつゝあるものなるを以て、無痛瞬時の新自殺法は多く行はるゝ