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Page:Bushido.pdf/183

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甚大なるは、多數の武士に假すに、自から其生命を絕つに、良好なる口實を以てしたるものなり。吁嗟、かの詩人ガースが、

譽を喪はゞ、死こそ賴みなれ。
死は耻を逃るべき
唯だ一つの安らけき隱れ家。

と歌へる感想を賛和し、莞爾として、其靈魂を幽冥に葬れるもの、知らず果して幾許人なるやを。武士道は名譽を伴ふの死を以て、盤根錯節を斷つの利刄なりとせり。されば志望雄大なる武士は、天命を完うして死するを以て、無氣力平凡にして、士の冀ふべき最期にあらずとしたり。惟ふに基督敎徒と雖、若し明らさまに其心情を吿白する者ならんに