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第十二章 切腹及び敵討

 切腹及び敵討の二制度に就いては、幾多海外文士の之を說いて、やゝ詳なるものあり。

 切腹又た割腹即ち世俗にはらきりと云ふは、其字の示すが如く、腹部を切りて自殺することなり。初めて此語を聞く者の或は叫びて云はん、『腹を切るは、何ぞ其の不合理なる』と。然り、外人の耳朶には、必ず先づ奇怪不合理の感を與ふべしと雖、凡そ沙翁を讀みたるものならんには、之に由りて甚だしく奇異の感を起さざるべし。彼はブルタスの口に上ぼせて、『汝シーザーの魂魄現はれ、我が劍を逆にし