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Page:Bushido.pdf/168

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威嚴に害ありとし、夫たるもの其妻をキツスせず――縱令私室に在りては、爾かせんとも、他人の面前に於ては之をなさず。一靑年が戱れに、『米國人は、他の面前にて妻をキツスし、私室に在りては、此れを鞭つ。日本人は之に異り、他人の前に在りては、妻を打つとも、私室に在りては此れをキツスす』と云へる、亦た故無きに非らず。

 擧止沈着、精神重厚なるに於ては、容易に感情の爲に亂すところとならず。曾て記す、日淸戰役の當時、某聯隊の兵士の一市を出發するに際し、多數の人民は、隊長以下の軍隊に訣別せんが爲、停車塲に群集せり。一米國人あり、擧國奮起の此秋なるを以て、歡呼の聲必ずや天地を動かすものあらんことを豫想して、其所に到り見れば、群集中には、兵士の父