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術、槍術、兵法、書道、倫理、文學及び歷史の類なりしことは、又た異しむを須ひず。此中、柔術及び書道を必須とする要旨は、多少之れが說明を加へざれば、或は領し難きものあるべし。能書良筆を尊びたる所以のものは、盖し、漢字の形象に成れるが故に、繪畵の性質を帶びて、美術的價値を有すると、又た筆蹟は人の性格を表示するものなりと認むるに由る。柔術は即ちやはらかき術にして、之れが簡短なる定義を下さば、即ち攻守の業に、人體解剖の知識を適用したるものなりと云ふを得ん。角力とは自から其類を異にして、筋力に賴るものに非らず。又た他の格鬪の法と異なりて、毫も武器を用ゐず。其法とする所は、敵の身體の某所を摑み、或は之を打ちて、痲痺せしめ、再び抵抗する能はざらしむるに在り。