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Page:Bushido.pdf/147

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ことを願ふを見るに非らずや。

 義理と人情との衝突によりて、心破れたるもの古來其人多し、豈に特り重盛のみならんや。沙翁も將た舊約全書も、孝を說いて未だ明かなるものあるを見ず。然るに一旦此の衝突の起るや、武士道は孝を捨てゝ、寧ろ忠を取るに遲疑せず、加之ならず女子も亦た敢て其子を勵まして君主の爲に死せしむ。チヤールス一世の淸敎徒と戰ひて敗るゝや、名臣ウインダム之に死し、其三子亦た斃る。人あり其寡婦の爲に愀然之に哭せしに、容を正し答へて云ひけるは、吾が一門の王に奉ずるに於て、三兒豈に惜しむに足らむや、若し尙ほ他兒あらんには、之をも擧げて、我王に献ぜんものをと云ひしとぞ。而して我國武士の母たるもの、多くは寡婦ウ