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臣あり、慰藉して、『今日御手に御あひなされず候とも、御急ぎなさるまじく候。御一代には、かやうの事幾度も御坐あるべく候』と諫めたれば、賴宣之を聞き、其老臣を一睨して、『我ら十三歲の時の、又た有るべき乎』と叱したりと傳ふ。
武士は名を重んじて、命を輕んず。故に一旦大事あるに臨んでは、從容として死に就く、歸するが如きものあり。而して武士の生命を見ること、鴻毛の如く、之を犧牲として、毫も辭せざりしは、殊に忠義の一途に於て之を見る。盖し忠節の義務は、即ち封建道德の柱梁なり、其の整然たる