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の侮蔑せられたるより、自から、世上の名聞に意無き輩を、其範圍に吸集したり。西諺にも、『人を盜と呼べ、彼れ即ち盜をなさん』と云へるが如く、假に某の職業を稱するに汚名を以てせんか、此れに居るもの亦た、其汚名に適したる態度に出づべきは自然の數にして、ヒユー、ブラツクも、『尋常なる良心は、之に對する要求に應じて醒起し、而して容易に此れに期待する道德標凖の區域に墮落す』と曰へり。されど商業にもあれ、其他何の職業にもあれ、凡そ人の常に執る所の業を見るに、之を行ふに當り、各一種の道德法を有せざる無きは、復た論を待たず。封建時代に於ける日本の商賈と雖、亦た其間に自から道德の存するものありて、之れが爲に、組合、兩替取引、保險、手形、爲替等の商業の根本制度すら、其