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Page:Bushido.pdf/117

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いて日本人の商業道德に關し、多少の辯を費すも、亦た敢て失當の擧にあらざるべきを信ず。外人の著書報吿中、日本人の商業道德に關して不平を訴ふるもの尠からず。商業道德に怠慢なることは、實に我國家の體面上最醜の汚辱なり。されど之を詬罵し、又た卒爾として我が國民全般を非難するに先だち、試みに頭腦を冷靜にして其然る所以を考究せんか、或は未來の好望を以て慰藉報酬せらるゝことなしとせず。

 人の職とする所のもの、其類一にして足らずと雖も、就中、武人と商賈との二者の如く、多大に隔絕せるは無かるべし。商賈は四民の最下級に位するものなりき。武士は土地より俸祿を收め、農耕の業は、或は自から以て娛樂とすること