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道に入らば、直ちに此れぞ時間と勞力との最も節約を得たるものなることを知らん。換言せば、此定式は即ち力の利用の最も經濟的なるものにして、スペンサーの定理に從へば、最も優美なるものなり。

 社交的禮法の裏に含蓄せしめたる精神的旨義、即ち『衣服哲學』の用語を假りて云へば、禮儀作法を以て單に外部を被ふの衣服とせる精神修養の功德は、其外見の示す所に勝りて逈かに大なるものあり。余も亦た或はスペンサー氏の社會學論理法に倣ひて、我國の禮法の源頭に溯り、其由つて來れる進化の次第經路を繹ぬるを得ん。されど斯の如きは本書の任とする所にあらずして、予は唯だ爰に禮を嚴守することの含有せる德育を主眼として、之を說かんと