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ければ能く之れを戰はし、少なければ能く之れを逃れ、かざれば能く之れを避けよ。故に小敵の堅きは大敵のとりこ也。夫れ將は國のたすけ也、たすけあまねければ國かならずず强し、たすけ𨻶ひまあれば國必ず弱し。故に君の軍にうれふる所以のもの三つ。ぐんの以て進むべからざるをらずして、之れに進めといひ、軍の以て退くべからざるを知らずして之れに退けといふ、是れを縻軍びぐんといふ。三軍の事を知らずして三軍の政をどうするときは軍士ぐんしまどふ。三軍の權を知らずして三軍の任をどうするときは軍士疑ふ。三軍旣に惑ひ且つ疑ふときは諸侯のなんいたる。是れをぐんみだり勝を引くといふ。故に勝を知るに五あり。以てともに戰ふべく、以て與に戰ふべからざるを知る者は勝つ。衆寡の用を識る者は勝つ。上下よくを同うする者は勝つ。を以て不虞ふぐを待つ者は勝つ。將のうにして君ぎよせざる者は勝つ。此の五つの者は勝を知るの道也。故に曰く彼を知りおのれを知れば百戰あやふからず、彼を知らずしておのれを知れば一しよう、彼を知らずおのれを知らざれば戰ふ每に必ずやぶる。


軍形第四

 孫子曰く、昔の善く戰ふ者は、先づ勝つべからざるをして、以て敵の勝つべきを待つ。勝つべからざるはおのれにあり、勝つべきは敵にあり。故に善く戰ふ者は能く勝つべからざるを爲して、