吳起秦と戰ふ、未だ合せざるに一夫其の勇に勝へずして前んで雙首を獲て還る。吳起立に之れを斬る。軍吏諫めて曰く、此れ材士なり、斬るべからずと。起曰く材士は則ち是れなり、吾が令にあらざるなりと、之れを斬る。
凡そ將は理官なり、萬物の主なり、一人に私せず。夫れ能く一人に私せず、故に萬物至つて之れを制す、萬物至つて之れを命ず、君子は囚を五步の外に救はず、鉤矢之れを射ると雖も追はざるなり。故に能く囚の情を審にする者は菙楚を待たずして囚の情畢すべし。人の背を笞うち、人の脅を灼き、人の背を束ねて囚の情を訊ぬれば、國士と雖も其の酷に勝へずして自から誣ふることあり。今世の諺に曰ふ、千金死せず百金刑せずと、試みに臣の言を聽け、臣の術を行へ、堯舜の智ありと雖も一言に關かる能はず、萬金ありと雖も一銖を用ふる能はず。今夫れ獄を決するに、小圄は十數に下らず、中圄は百數に下らず、大圄は千數に下らず、十人百人の事を聯ね、百人千人の事を聯ね、千人萬人の事を聯ぬ。聯ぬる所の者は親戚兄弟なり、其次は婚姻なり、其次は智識の故人なり、是れ農は田業を離れずといふことなく賈は肆宅を離れずといふことなく、士