なり。夫れ天下の節制を提げて百貨の官無きに其の能く戰ふといふこと無けん、兵を起して直に甲冑をして蟣蝨を生ぜしめば、必ず吾が爲めに用を效す所なり。鷙鳥雀を逐ふとき、人の懷を襲ひ人の室に入るある者は出でて生くるにあらず後に憚りあればなり。
太公望年七十、牛を朝歌に屠り、食を孟津に賣る、七十餘を過ぎて主聽さず、人人之れを狂夫と謂ふ。文王に遇ふに及んでは則ち三萬の衆を提げ一戰して天下定まる、武議に非んば安んぞ此の合を得ん。故に曰く、良馬、策あれば遠道致すべし、賢士、合あれば大道明かにすべし。武王紂を伐ち師盟津を渡る、旄を右にし鉞を左にし、死士三百戰士三萬、紂の陣億萬、飛廉惡來、身戟斧を先にし陣開くこと百里、武王士民を罷らさず、兵刄に血ぬらさずして商に克ち紂を誅す、祥異なきなり。人事の脩不脩にして然るなり。今の世、將、孤虛を考へ咸池を占ひ龜兆を合せ、吉凶を視、星辰風雲の變を觀て、以て勝を成し功を立てんと欲す、臣以て難しとなす。夫れ將は上、天に制せられず、下、地に制せられず、中、人に制せられず、故に兵は凶器なり、爭は逆德なり、將は死官なり、故に已むを得ずして之れを用ふ、上に天なく、下に地なく、後に主なく、前に敵なく、一人の兵、狼の如く虎の如く風の如く雨の如く雷の如く霆の如く、震々冥々天下皆驚く。勝兵は水に似たり、夫れ水は至つて柔溺なる者なり、然るに觸るる所の丘陵は必ず之れが爲めに