兵は論を以て勝つ、國は專を以て勝つ、力分かるゝ者は弱し、心疑ふものは背く、夫れ力弱め、故に進退豪からず、敵を縱して擒にせず。將吏、士卒、動靜一身。心旣に疑ひ背けば則ち計決して動かず、動くこと決するも而かも禁ぜられず、異口虛言ありて、將に修容なく卒に常試なし、發攻必ず衂す、是れを疾陵の兵と云ふ、與に鬪ふに足るなし。將帥は心なり群下は支節なり、其心動くに誠を以てすれば乃ち支節必ず力む、其心動くに疑を以てすれば則ち支節必ず背く。夫れ將、心に制せざれば、卒、節を以て動かず、勝つと雖も幸にして勝つなり、攻權にあらざるなり。夫れ民兩ながら畏るゝなし、我を畏るれば敵を侮る、敵を畏るれば我を侮る、侮らるゝ者は敗れ威を立つる者は勝つ。凡そ將、其道を能くする者は、吏其將を畏る、吏其の將を畏るゝ者は民其吏を畏る、民其吏を畏るゝ者は敵其民を畏る、是の故に勝敗の道を知る者は必ず先づ畏侮の權を知る。夫れ其心を愛說せざる者は我に用ひられざるなり、其心を嚴畏にせざる者は我に擧げられざるなり。愛は下の順ふにあり、威は上の立つるにあり。愛、故に二ならず、威、故に犯さず。故に善將は愛と威とのみ。戰ひて必ず勝たざれば以て戰を言ふべからず、攻めて必ず拔かざれば以て攻