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Page:Bukyō shitisyo.pdf/105

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心狂ひ目盲ひ耳聾す、三悖を以て人を率ゐるものは難し。兵の及ぶ所羊膓も亦た勝つ、鋸齒も亦た勝つ、山にるも亦た勝つ、谷に入るも亦た勝つ、方も亦た勝つ、圓も亦た勝つ、重きものは山の如く林の如く江の如く、輕きものはつゝみやきの如くあぶりものの如し、垣の如く之を壓し、雲の如く之れを覆ひ、人をして聚まれば以て散ずるを得ず、散ずれば以て聚まるを得ず、左以て右するを得ず、右以て左するを得ざらしむ、兵に木弩を總する如く、羊角の如く、人人陵を騰し膽を張り疑慮を絕たざるなく、堂々として決して去るなり。

制談第三

 凡そ兵制は必ず先づ定む。制先づ定むれば則ち士亂れず、士亂れずば則ち刑乃ち明かなり、金鼓の指す所則ち百人盡く鬪ふ、行を陷れ陣を亂れば則ち千人盡く鬪ふ。軍を覆へし將を殺せば則ち萬人刄を齊うす、天下能く其戰に當ることなし。古は士什伍あり、車輸列あり、鼓鳴り旗麾いて先づ登る者未だ嘗て多力の國士に非んばあらざるなり、先づ死する者未だ嘗て多力の國士に非んばあらざるなり。敵一人を損して我が百人を損するは此れ敵をたすけて我を損する甚し。世の將禁する能はず。征役軍を分つて逃れ歸り、或は戰に臨んでみづかぐれば則ち逃れ傷くこと甚し。