Page:Arai hakuseki zenshu 4.djvu/821

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けて來れる也、凡は隣國の使人といヘども、必ず其信を伸る所あり、我國もとより汝の國と、舊好あるにあらず、もし其信とすべき物なからむには、何を以てか其使たる事を信ずべき、いはんや、汝のこゝに來る、我國の服を服し、我國の言を誦ず、これ我西鄙の人をまどはすに、我國の人となり、ひそかに其法を說むとするにあり、其計窮しぬれば、初て其國の使と稱す、其跡につきて見る時は、そのいふ所信ずべからずと問ふ、此國にして我法を禁ぜられしより、凡そ我方の人、長崎に來れる、或は殺され、或は押還され、いまだ一人の國命を達せしものあらず、これ我孤身にして、西鄙の地に至りとゞまれる所也、此國之服を服せし等の事に至ては、長崎におゐて申す所、すでに訖りぬ、又本國の議は、前に申せし所のごとく、吿訴ふる所、もし恩裁の御事あらんには、かさねて信使を奉て、其恩を謝し申して、我法を此土に行はんといふにあり、國に入ては、まづ其禁をとふの禮、いづれの國にかなからざらむ、いはむや、國禁を除かるべき事を望請ふ使として、いかむぞ其國に入りし初に、禁を犯し、罪をかさね、みづから國命を辱しむる等の事をなすべきや、其義自ら明らかにこそ候べけれといふ、

天主の敎、我いまだ聞所あらず、其大略を聞かむと問ふ、大凡、物自ら成る事あたはず、必これを造るものを待得て成る、今試に一堂の制を見るに、其制自ら成る事あらず、必工匠を待へて成る、一家の政を見るに、其政自ら治るにあらず、必君長を待へて治る、天地萬物、これに主宰たるものあらずして、成る事あらず、其主宰名づけて、デウスといふ、〈デウス、漢に天主と譯す、〉デウス初に天地萬物を造らむとするに當りて、まづ善人を住しめむために、諸天の上にハライソを作り、〈ハライソとは、漢に譯して、天堂といふ、佛氏いはゆる極樂世界のごとし、〉無量無數のアンゼルスを作る、〈アンゼルスは佛氏いはゆる光音天人の類、ポルトガルの語に、アンジヨといふなり、〉其後に、大地世界を作りて、タマセイナを取て、〈タマセイナ、此に淸淨土といふが如し、〉男を作りて、アダンといひ、其右脇の一骨を取て、女を作りて、ヱワといふ、すなはちこれ人の始也、彼男女をして夫婦となし、テリアリの地に居らしめ、〈テリアリ、こゝに安樂國土といふがごとし、〉其餘の地をば、鳥獸のある所とす、凡人物のアニマに、三の品あり、〈アニマは、魂なり、〉草木のごときはセイのみ、〈榮枯のみあるをいふ、〉禽獸のごときはドウのみ、〈飛走のみあるをいふ、〉此二つの物は、形すでに滅びぬれば、アニマもまた滅びぬ、こ